“文学少女”と慟哭の巡礼者 購入2007年08月29日 22時08分

竹岡美穂のイラストも作品の魅力

“文学少女”と慟哭の巡礼者【パルミエーレ】 野村美月

ファミ通文庫 ISBN978-4-7577-3685-6

書評で面白そうだと思いこの著者の以前の作品Bad! Daddy1~4を読んだときはテンプレートなキャラクターをテンプレートなストーリーの中で通り一遍に動かしているだけだなという印象を持ってしまいあまり楽しめなかった。(もちろんこの作品はセーラームーンなどのパロディという面もあるため月並みなキャラクターやストーリーになるのも仕方ないわけだが)。しかも次のシリーズが「うさ恋」というまたライトノベルでもありがちそうな話だったので興味が薄れ他の作品も読む気が失せてしまっていた。

文学少女の第1作が朝日新聞の読書欄のライトノベル欄で紹介され今回は今までの作品とはだいぶ気色が違うようだと感じ読み始めた。冒頭、竹田さんが出てくるあたりまではまたありがちなキャラクターで展開する典型的ライトノベルだなと思ったが、その後はストーリーが二転三転。竹田さんもよくある美少女キャラじゃなく複雑な人物像を見せていて興味深かった。ストーリーの多少の無理も気にならないほどだった。

シリーズを買うだけでなく、ファミ通文庫のWEBページに載った短編を欠かさずチェックし、好きでもない作品のムックを文学少女の短編目当てに買ってしまうまでになってしまった。作品はライトノベルらしく登場人物のキャラクターが立っているので読みやすい。それに加えて“文学少女”遠子先輩の語る名作文学の薀蓄も楽しい。ジュブナイルにあってライトノベルになかった啓蒙という面を復活させている。紹介されている文学作品は著者が本当に好きな作品なのだろうと思わされてしまう。著者は更級日記の作者のような物語好きかもしれないと想像してしまう(そういえば遠子先輩の薀蓄に登場したなあ)。

最新刊の第5作目が刊行(ほんとは明日が発売日のようだが)。読み終えてはいないがいろいろなキャラクターの複雑な面が登場するようで遠子先輩のようにゆっくり味わいたい。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://ryo.asablo.jp/blog/2007/08/29/1758514/tb