スペースシャトルが心配 ― 2006年07月04日 23時26分
天候不順のため延期が続いていたスペースシャトル「ディスカバリー」の打ち上げ。極低温の燃料・酸化剤の注入と抜き取りを繰り返したためETの断熱材が剥落していたが、NASAは危険はないとして打ち上げを延期しないと発表した。
本当に危険はないのか、非常に心配だ。コロンビア事故の原因と推定されたバイポッド部分からの剥落はシャトルシステムの根本的な欠陥なのだ。対策済みのはずの昨年のディスカバリー打ち上げでも剥落していたことからこの一年をかけて新たな対策を施したとのことだが、連日の延期による燃料の注入抜き取りの繰り返しは断熱材に相当な負担をかけることになるのではないか?
独立記念日に間に合わせようと三度同じことを繰り返すほどNASAは愚かではないとは思うのだが・・・
とにかく、無事な打ち上げ成功だけを願っている。
はやぶさは生きている ― 2006年03月07日 23時20分
はやぶさの現在の状況はこちらに概要が書かれている。
救出運用モードに移行後非常に通信状況が悪く通信途絶が続いていたが、1月下旬にビーコン受信が可能となり、現在はテレメトリを受信でき、コマンド送出も出来るようになった。
ガス漏洩に伴い姿勢が乱れたことにより、バッテリが完全に放電しきった状態になり内部の温度が非常に低下しているようだ。イオンロケット用推進剤であるキセノンガスは通信途絶前とほぼ変化ないが、化学ロケット用の燃料、酸化剤共に空になっているとのこと。
火星探査機のぞみよりはまだましな状況であるのが救いであるが、これは非常に危機的な状況である。しかも探査機内部に凍結した燃料・酸化剤が残っているかもしれない。探査機を再起動したとき内部温度の上昇によりこれが再び漏洩を起こし姿勢を乱したり、最悪の場合爆発のおそれもあるのではないか?
地球帰還までにはまだ非常に困難で険しい道のりが続いているが運用チームのこれまでの懸命な努力によりここまで探査機の機能が回復してきた。何とか帰還軌道に乗ることを願っている。
ASTRO-F軌道投入成功、「あかり」と命名 ― 2006年02月22日 23時58分
天候不良のため2月21早朝の予定が22日に延期されていた、M-V型8号機の打ち上げが6時28分に行われ、ロケットの飛行はすべて問題なくメインペイロードの赤外線天文衛星ASTRO-Fの所定の軌道投入に成功した。JAXA(ISAS)の打ち上げのライブ放送を見ていたが的川さん自ら実況していたのがなんとなくほほえましかった。
軌道投入後、衛星は太陽電池パネルを展開し、正常に動作しているとのことである。かすかな赤外線を捉える事から「あかり」と命名された。ずいぶんかわいらしい名前のような気がした。
その後のニュースリリースによれば、太陽センサの出力値に異常があり姿勢制御の太陽指向が終了せず、地球センサとジャイロを使って姿勢制御を行い、太陽センサの状況は現在調査中とのこと。今のところ観測に支障はないそうで一安心であるが、正常に戻って欲しいものである。
またサブペイロードの超小型衛星、CUTE1.7+APDの軌道投入にも成功したとのこと(新聞記事より)。もうひとつのサブペイロードのソーラーセイル膜面展開実験のほうは結果は不明であるがこちらも成功を願っている。
旧ISASの打ち上げ映像・ニュースリリースは迅速で詳細であり、非常に好感が持てるが、旧NASDAの方は遅い。先日MTSAT-2を打ち上げたH-2A9号機の打ち上げ映像などはまだ公開されていない(写真がちょっとだけである)。RSC(ロケットシステム)からの委託という事情もあるのだろうが、どうも次の情報収集衛星新2号機の打ち上げを控えて情報を出さないようにしているようだとかんぐってしまう。RSCのWebページでもPR映像しかなかった。
はやぶさ、救出モード運用に入る ― 2005年12月14日 23時43分
小惑星イトカワに着陸したはやぶさだが、その後化学ロケット燃料の漏洩によるガス漏出のため姿勢が乱れ高利得アンテナの向きがずれ地球との交信が途絶しかかっていた。
その後ビーコン受信が回復してからは姿勢を戻すためにイオンロケット推進剤のキセノンガスを直接噴射するという裏技的運用まで行っていた。
しかし12月8日再び姿勢異常が生じ地球との交信が出来なくなっている。化学ロケット燃料の漏洩によるものと思われる。復帰までには相当の長期間がかかることが予想され、2007年の地球帰還のための軌道変更には間に合わないため帰還を3年後の2010年とし、今後1年間を救出運用とするという
今後の問題は「のぞみ」の時にもあった運用期間の延長による更なるトラブル発生、たとえば内部機器の劣化、とりわけ太陽電池の劣化によるイオンロケットの推力低下など、素人が思いつくだけでも文字通り山積している。地球帰還までの道のりは更に遠く険しいものとなっている。
運用チームの知恵と努力による成功を祈っている。またJAXA全体によるサポートとバックアップを期待している。
どこかの評論家風情が「お粗末ではないか」などと利いた風なことをほざいていたが、初チャレンジで何もかも全部成功しなければだめだと言いたいのだろうか?
M-Vロケットで打ち上げられる惑星探査機としては最大限の冗長性を持たせていたと思う。必ず成功させたいなら「はやぶさ」同型機を複数打ち上げて数を稼ぐか打ち上げロケットにH2Aを使う大型探査機の開発が必要だろう。それをさせないのは科学技術への予算不足とJAXA(ISAS)の人手不足とJAXA(NASDA-ISAS-NAL間)の連携不足だ。
はやぶさが試料採取に成功 ― 2005年11月27日 00時33分
JAXAトップページからの発表
「26日午前7時すぎ、第2回タッチダウン(着陸と試料採取)が行われました。はやぶさは所定のプログラム通り動作し、上昇に転じた探査機の姿勢も安定していました。サンプラーホーンが変形を検知した時間は、着地成功とサンプル取得の実施が確認できました。」 「なお、機体は姿勢変動を検知し自律的に「セーフホールドモード(安全姿勢)」に入りました。」とのことである。
もう1個ターゲットマーカーが残っているが、残燃料に余裕がない状況だからもう1回の着陸は出来るのだろうか?またセーフホールドモードからの復帰も心配だ。
地球帰還まではまだまだ困難な道のりが続くが成功を祈っている。
「はやぶさ」リハーサル降下再試験は順調 ― 2005年11月12日 19時36分
小惑星イトカワからのサンプルリターンを目指す惑星探査機「はやぶさ」は11月4日にリハーサル降下試験を行ったが自律航行の出力が異常値を示したため途中で中止された。
この異常の原因は画像処理で複数のオブジェクト(目標)を検知した事により処理能力を超えてしまったこと、およびリアクションホイールの代わりにスラスタによる姿勢制御を行わねばならないためばらつきの大きい外乱を受けることになったためとの説明があった。
この二つの問題を解決することを目的として11月9日に行われた降下試験では、2度降下が行われ、トラブルに対する対処方法が正しく機能することを確認し、高度約70mおよび500mまで接近した。
そして本日11月12日に再度のリハーサル試験が行われている。高度100mで小型ローバー「ミネルバ」を分離、現在「はやぶさ」は高度1kmで正常に航行しているようだ。
現在の「はやぶさ」は"Hayabusa Live"で知ることが出来る。
この"Hayabusa Live"による状況報告は探査機の制御で非常に忙しい中、手すきの研究者が交替で行っているようである。彼らの努力に深く感謝する。これからは旧ISASだけでなく統合したJAXAという組織全体で広報その他のバックアップを行ってほしい。
はやぶさ、サンプルリターンへ ― 2005年10月27日 22時17分
JAXA プレスリリースより。イオンロケットの実証試験および小惑星からのサンプルリターンを目指す、惑星探査機「はやぶさ」の今後について
目標の小惑星「イトカワ」近傍に到着したはやぶさだったが、姿勢制御装置のリアクションホイール3機のうち2機が故障して姿勢制御に化学ロケットを使わねばならなくなった。しかし化学ロケットは推進剤(燃料)に限りがあるので節約しなければ地球軌道に帰還できなくなるかもしれなかった。
今回の発表で「微小なジェットの噴射を精度よく管理して加える方法にめどがつき、帰還までに必要な量を確保できることが確認」出来たとのこと。制御プログラムを更新したのだろうか。
今後の予定は以下のとおり。
- 11月 4日 リハーサル降下
- 11月12日 第1回着陸・試料採取
- 11月25日 第2回着陸・試料採取
今後もターゲットマーカーの降下、小型探査機「ミネルバ」の降下をはじめサンプルリターンまでの道のりはまだ遠く険しいが、とにかくがんばってほしい。
宇宙船共同開発を打診 ロシアが日本に ― 2005年10月16日 04時59分
共同通信による報道。「ロシアがJAXAに対し、現在同国が単独で進めている新型有人宇宙船「クリーペル」開発への参加を打診してきたことが、13日分かった」とのこと。「日、ロ、欧の3極だけで国際宇宙ステーション(ISS)を運用する技術的な道が開けることになる」というが、問題がいくつかある
現在、ISSの日本モジュール「きぼう」は完成してアメリカで打ち上げを待っているが、いつスペースシャトルが打ち上げられるかはまったくわからない状態である。また打ち上げ費用として日本がアメリカに譲渡することになっていた「セントリフュージ」モジュールは更なる縮小のため計画からキャンセルされた(「きぼう」打ち上げ費用の負担はどうなるのか?)。第一現在の2名体制のISSでは科学実験が十分に行えるとはとてもいえない。
この状況下で共同計画に参加しても明らかに資金不足なロシアに金を吸い取られるだけではないのか?確かにロシアの有人飛行(ソユーズ)はスペースシャトルに比べ安定しており十分安価だが新規開発のこれもそうなるとは限らない。
さらに写真の有翼形宇宙船の模型が不安を掻き立てる。宇宙船に翼をつけても何の役にも立たないことは現在のスペースシャトルではっきりしている。有人カプセルに長方形のパラシュートや三角翼の凧(ゲイラカイト)のようなものをつけるだけで着陸地点の変更は十分できるのだ。
中国のようにある程度まで金を出してもノウハウを学ぶというので良いのではないか?シャトル・ISS計画のように相手に頼りきった計画では金をどこかに捨てることになる。
有人飛行をする意味が本当にあるのか?それはISSでなければならないのか?日本独自で有人飛行は出来ないのか?「ふじ」構想(現有のH2Aを使った有人宇宙船の構想)を生かすことは出来ないか?これまで日本が数千億円をつぎ込んだISS計画の現状を見るとよく考え直さねばならない。
太陽X線観測衛星「ようこう」大気圏再突入 ― 2005年09月12日 22時44分
JAXAのメールニュースより
ISASが平成3年8月30日に打ち上げた太陽X線観測衛星「ようこう」(SOLAR-A)が平成17年9月12日18時16分ごろ、南アジア上空(北緯24度、東経85度付近)において大気圏に再突入して、軌道上から消滅した
再突入直前の軌道要素は以下のとおりであった
- 遠地点高度 247.7 Km
- 近地点高度 242.4 Km
- 軌道傾斜角 31.3 度
- 軌道周期 89.3 分
「ようこう」は太陽表面のダイナミックな活動の様子を撮影してくれた。後継のSOLAR-Bは平成16年度中に打ち上げ予定らしい
スペースシャトルの落日 松浦晋也 ― 2005年08月16日 22時02分
- スペースシャトルの落日 松浦晋也
- エクスナレッジ 1300+税
アメリカの宇宙計画と日本の公共工事の類似点の指摘などは興味深い
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